霊長類最大の種━━『人族』。
人界と呼ばれる世界において、首長たるこの人族は現在、
滅亡の危機にある。



年代不明。
推定4000年以上前の大昔、世界の中心に位置する、
現在で言うところのセントセントロという島にて、
異世界とを結ぶ謎のゲートが出現した事により、
人界は一変した。
ゲートを通じ、魔界と呼ばれる異世界から、
その首長たる異形の種━━『魔族』が侵略してきたからだ。
強靭な肉体、強力な魔力を持ちながら長命であり、
加えて、特殊な力場を発生する魔神力
という異能力を持つ種すらも混じる超常の存在の前では、
何の力も持たぬ脆弱な人族など、蹂躙される他無かった。

━━しかし、現れたゲートはもう一つあった。
天界と呼ばれる異世界とのゲートからは、
背に大きな翼を持つ翼人が現れ、
悪逆非道を尽くす魔族と交戦し、
なんと彼らを討ち倒していった。
人族の救世主ともなる翼人らのその神々しい姿と、
魔神力と同等の力━━神霊力を始めとする異能に
感謝と畏怖の念を込めて、人々は彼らを『神族』と呼び、
崇める様になっていった。

神族と魔族のこの戦争を後の世は『神魔大戦』と呼び、
神魔大戦は2000年という気の遠くなる時を経て
続けられたが、神器という切り札を神族が用いた事によって
戦況は一変し、神族の勝利という形で大戦が終結すると、
神族と魔族は公から姿を消した。
これによって人族は、長い間切に願っていた平和をようやく
得る事が出来、そして、その平和は天界からやって来た
神族によって与えられたものと人々は捉えている事から、
神族への敬意を込めて『天』の名を冠した、
神魔大戦終結を紀元とする暦━━天暦が生まれた。

━━しかし、世とは儚いものである。
人族の願いであった平和は、それだけに長い間続いたものの、
天暦1403年━━力を蓄えた魔族らによって再び侵略が
行われ、その災厄によって平和は無惨にも破壊された。
神族を警戒したのか、
神魔大戦以上の急襲によって総人口の約75%もの人族が
犠牲となり、人族という種は突如、かつての様に滅亡の危機に
瀕するのであった。
しかも神魔大戦の時とは違い、初動こそあったものの神族は
姿を現さず、人族は再び蹂躙される暗黒の歴史を歩む事となる。
人々は、後に訪れるかもしれない災厄への備えとして
平和の時代に培った、独自に発展させた武術や科学、
模倣となる魔法を駆使して魔族に抵抗し━━
そして、天暦1518年。
天から授かった力なのか、それとも魔族への怒りから生まれた力
なのか、魔神力や神霊力に酷似する異能の力━━聖王力を有する
『聖王』が生まれた事によって人族は辛うじて種の存続を維持し、
それは現在にまで続くのであった。



時は天暦2000年━━現在。
運命の歯車は回りだし、歯車が動かす数奇な物語が始まる。

━━この地球という星で。